グランプリ受賞者インタビュー

「オオムラサキと図鑑くん」で第2回北杜市シナリオコンクール一般部門のグランプリを受賞した竹上雄介(たけがみゆうすけ)さんは、東京生まれ東京育ち。北杜に知人がいるということで、第1回に引き続き、今回の第2回のコンクールにも応募されました。

グランプリ受賞を知った時のことを聞くと、「単純に嬉しかったです」と笑顔。
「今回は結構練って、自分ではこれだというところで出したので、駄目だったらがっくりくるかも、と思っていました。1次審査が通り、2次が通り……どきどきしました!」

受賞したシナリオは、小学校高学年の子どもたちのお話です。映像化されたときのイメージを思い浮かべ、子どもの話を書くことは少なくないそうです。

北杜市のことを調べていて、オオムラサキから大村 咲ちゃんという女の子の名前を思いつき、そこから構想はどんどん膨らみました。「ただ、この名前を思い付く人はいっぱいそうなので、人間的な心の変化をきちんと表現できるように気をつけました。短編なので、些細な変化をダイナミックに描くというか」。

普段は思いついたらパッと書くことが多い竹上さん。「今回は調子に乗るのをぐっと抑えて、練る段階を置いた後に1週間程で書きました。構想から書き上がるまで1ヶ月くらいだったでしょうか」と話していました。

竹上さんがシナリオを書き始めたのは4〜5年前のこと。その前から有名映画会社にお勤めされており、製作現場の雰囲気はよくご存知です。ただ、これまで経理などの”固い”業務に就いており、なんとか自分の作品が映像化されないかと、いくつものシナリオコンクールに自分で応募し続けていたそうです。

「年間10本は書くので、これまで50作品は書いたかも」と竹上さん。仕事が忙しい中、シナリオセンターの通信講座も受講していたそうです。

今回の受賞後、松永監督や大前先生と映像化に向けて打ち合わせを行い、セリフをもっと面白くして、オオムラサキの魅力がより伝わるように、との観点からシナリオの書き直しをしている最中だそうです。
「応募したときは自分では完璧と思って出しているのですが、話を聞くとどれもなるほどな!と思うのです。代案もサッと出てきて、関心しました。これから悩みたいと思います」と悩むのが楽しそうな様子。

また、役のイメージを固めるためにキャラクター表も作り、絵コンテを描いてもらいました。「大村咲ちゃんなんかイメージにぴったりの絵で、シナリオに書いたことが伝わっていたんだ、と嬉しくなりました」。

来月には撮影シナリオを確定するスケジュールだそうです。念願の映像化。夢が叶うって素敵ですね。北杜をより知った後での最後の手直し、期待しています!

 

 

映画の設計図がシナリオ。いいシナリオから悪い映画はできても、悪いシナリオからいい映画はできない……

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オオムラサキのミニ講座

第2回シナリオコンクールのグランプリ作は「オオムラサキと図鑑くん」です。この作品の映像化に向けて準備が始まりました。まずはオオムラサキの生態など正しい知識をみんなで共有しようということで、北杜市オオムラサキセンター跡部館長をお招きし、講義をして頂きました。

オオムラサキはオスの美しい羽色が目を引く大型の蝶で、昭和32年に国蝶に認定されました。オオムラサキの全国一の生息地が北杜市で、市の昆虫にも指定されています。

夏にエノキの葉にたくさん卵が産み付けられ、ふ化して幼虫のまま越冬します。幼虫が服を脱ぐように上手に脱皮する姿は、実際に見ると感動するそうです。

羽化の前のさなぎの段階では、殻の中で自らの体をドロドロに溶かして大変身を遂げるというのですから凄いです。細胞を溶かす力を、人のガン治療に役立てられないかといった研究もあるとか。

北杜市のオオムラサキの個体数は、場所によっては激減しているところがあるものの、広葉樹林の植林地など増えている場所もあるため、全体としては少しずつ増えていると言えるようです。少し人の手が入った里山の雑木林は、成虫の食べ物となる樹液がきちんと出る木が多く、オオムラサキにとって良い環境なのだそうです。

跡部館長は、オオムラサキの生息地を守っていきたいという青年活動を発端に、オオムラサキの生態をいろいろと学び始め、北杜市オオムラサキセンターの設立に至った経緯について語ってくれました。「オオムラサキの町として有名になることが、自然環境の破壊や、蝶をこっそり捕獲しにくる人の抑止力になるのでは」と考えているそうです。

羽化の時期や時間帯についての質問が出ました。撮影のことを考えるととても気になる点です。時間帯は早朝が多く、さなぎがピリッと破れた後、成虫が外に姿を表す様子が見られるのはわずか1分程の間だそうです。
また、縄張り意識の強い成虫が鳥を追って体当たりする姿を、過去にロケ隊が何日もかけて撮影したそうです。撮影はやはり「頑張って粘るしかない」という結論に至りました。

この日は、グランプリを受賞した竹上さんも出席しており、シナリオの中に描かれたオオムラサキが、生態としておかしくないかといった点などを確認していました。

竹上さんは北杜市オオムラサキセンターにも足を運び、「敷地がとても広く、生きたまま展示されて触れることもできる昆虫もあり、こんなにも自然を大切にした所があるんだと感動しました。ヤギまでいるんですね。館長からはとても貴重な話をいただき撮影用シナリオは完成間近でしたが、もう一度書き直します」と話していました。

いろいろと知ると奥が深い昆虫の世界。竹上さんのシナリオによる映像化が楽しみです!